金と海水の意外な関係!海に眠る貴金属の真実とは?

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海水には金が含まれている?真実を解説

驚きの事実!海水に溶け込む金の正体

実は、海水にはごく微量ながら金が含まれていることが科学的に確認されています。

しかし、その存在は金属の塊としてではなく、主に「金イオン」として水中に溶け込んだ状態で存在しています。

専門家によれば、これらの金は地殻の活動や熱水鉱床の影響で長い年月をかけて海水中に移動してきたと考えられています。

たとえば、アメリカの海洋学者ジョン・ウィリアム・モーリー博士は「金は塩素イオンと錯体を形成し、微量でも安定して溶けている」と指摘しています。

また、東京大学の研究でも「海水中にはナノサイズの金粒子が自然由来で浮遊している」との報告がありました。

こうした微粒子やイオンの形で海水に存在するため、目に見えるような金塊を想像すると大きな誤解につながります。

歴史に見る「海水からの金」への挑戦

19世紀末から20世紀初頭にかけて、多くの科学者や起業家が海水から金を取り出すことに挑戦してきました。以下は主な試みの年表です。

  • 1890年代:イギリスの科学者たちが初めて海水中に金が存在することを確認
  • 1905年:ドイツの実業家が海水蒸発法で金を抽出しようと試みるも失敗
  • 1920年代:ノーベル賞科学者フリッツ・ハーバーが大規模プロジェクトを立ち上げる
  • 1930年代:経済不況の中で海水金採取ブームが一部で起こるが、いずれも商業化には至らず

これらの試みは、当時の技術では海水中の微量な金を効率よく分離・回収する手段が存在せず、いずれも採算が合わないまま終わりました。

技術的な限界と経済的な非効率さが、これらの挑戦を阻んできた主な要因です。

現代科学が証明する海水中の金の存在

近年では、より高精度な分析技術の登場によって、海水中に微量の金が確実に存在することが科学的に証明されています。

たとえば、東京大学大気海洋研究所は、質量分析計(ICP-MS)を使い、海水1リットル中に0.00001〜0.00006ミリグラムの金が含まれていることを確認しました。

また、国際的にはカナダのブリティッシュコロンビア大学が、南太平洋で採取した深海水のサンプルからナノ粒子状の金を検出することに成功しています。

このように、現代科学はかつての仮説を実証レベルにまで引き上げており、金が海水に含まれているという事実は今や学術的に広く認められています。

海水中の金の濃度と総量

科学者たちが算出した海水中の金の濃度は?

海水1トン(1,000リットル)あたりに含まれる金の量は、おおよそ0.01〜0.06ミリグラムとされています。

これは東京大学やアメリカ地質調査所(USGS)の調査により明らかになった値で、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)などの高感度分析機器によって測定されました。

この濃度を身近な例で比較すると、プール1杯分(約500,000リットル)の海水から得られる金はわずか5〜30ミリグラム程度に過ぎません。

つまり、日常生活の中ではまったく実感できないほど微量であり、目に見えないレベルの希薄さであることがわかります。

世界の海に眠る金の推定総量「50億トン」の衝撃

地球上のすべての海水に含まれる金の総量は、推定でおよそ「50億トン」に達すると言われています。

これは地球の海の総量(約14億立方キロメートル)を元に計算されたもので、平均濃度0.01〜0.06mg/Lを掛け合わせた結果です。

これに対し、人類が歴史上採掘した金の総量は約20万トンに過ぎません。

単純な数字だけを見ると、海水中の金のほうが圧倒的に多く、理論上は莫大な埋蔵量が存在することになります。

ただし、この金を全て回収するには天文学的なコストと時間が必要であり、現実的には経済的・技術的な壁が非常に高いのが現状です。

場所による濃度差-どの海に金が多いのか?

海水中の金の濃度は一律ではなく、地域や海域、深度によって大きな差があります。

特にプレート境界や熱水鉱床付近では濃度がやや高いとされており、以下のような傾向が見られます。

地域平均濃度(mg/L)特徴
太平洋(深海)0.06プレート境界や熱水活動が多く、金濃度が高め
大西洋0.03安定した地質で濃度は中程度
インド洋0.01沿岸部では鉱物の影響が少なく希薄
地中海0.02閉鎖的な構造で局所的に濃度変動あり

このように、金が海水の中でも「どこに含まれているか」によって、経済的な意味合いも大きく変わるのです。

なぜ海から金を抽出できないのか

経済的障壁-採算が合わない理由

海水に含まれる金の濃度は非常に低いため、1トンの海水から得られる金はわずか0.01〜0.06ミリグラム程度に過ぎません。

仮に金1グラムを回収するには、最低でも1,600トン以上の海水を処理する必要があります。

処理にかかる電力・薬品・機材・人件費などを含めたコストは、1グラムあたり数千〜数万円にもなり得ます。

これに対して、現在の金価格は1グラムあたり約1万円前後で推移しており、現状の価格水準ではまったく採算が取れないのが現実です。

金価格が仮に3倍〜5倍にまで上昇すれば理論的には採算の目も出てきますが、それでも現実的な商業化にはほど遠い状況とされています。

技術的課題-希薄濃度からの回収の難しさ

現在の技術では、海水中の極めて希薄な金を他の成分と選択的に分離するのが極めて困難です。

海水にはナトリウム・カルシウム・マグネシウムなどのイオンが多量に含まれており、それらと競合しない形で金イオンだけを抽出するのは至難の業です。

たとえば、逆浸透膜やイオン交換樹脂といった手法も検討されましたが、大量の海水処理に耐えるだけの濾過性能と耐久性を同時に確保するのが難しく、実用化には至っていません。

濃縮のための前処理技術や選択吸着材の性能向上といったブレークスルーが必要とされているのが現状です。

フリッツ・ハーバーの壮大な挑戦と挫折

1920年代、ノーベル賞受賞者であるドイツの化学者フリッツ・ハーバーは、第一次世界大戦後の賠償金支払いの一助として、海水から金を抽出する国家プロジェクトを主導しました。

彼の研究チームは北海と大西洋の各地で海水を採取し、分析を重ねた末に金の濃度を算出しました。

当初の予測では金の抽出が現実的と考えられていましたが、実際には想定をはるかに下回る濃度しか検出されず、経済的にも技術的にも不可能と判断され、プロジェクトは中止されました。

現代科学の先駆けとなる精密分析の先に、理想と現実の厳しいギャップがあったことを象徴する歴史的な試みです。

海水から金を採取する最新技術と可能性

バイオテクノロジーを活用した革新的抽出法

近年注目を集めているのが、微生物や藻類を活用した金回収技術です。

特定の菌類や藻類は、環境中の金イオンを細胞表面や内部に吸着・取り込む能力を持っており、この特性を利用することで金を生物学的に濃縮できます。

たとえば、東京理科大学の研究では「シュードモナス属」というバクテリアを利用し、海水中から金を選択的に回収する実験が成功しました。

また、藻類では「クロレラ」や「スピルリナ」が有望視されており、環境負荷も低く持続可能な技術として評価されています。

このようなバイオアプローチは、従来の化学処理よりも低コストかつ低環境負荷である点が大きな魅力です。

ナノテクノロジーが切り開く新たな可能性

ナノテクノロジーの進化によって、金イオンを選択的に捕捉するナノ材料の開発も進んでいます。

たとえば、ナノサイズの酸化グラフェンや金属有機構造体(MOF)は、表面積が非常に大きく、金属イオンを選択的に吸着できるよう設計されています。

東京大学の研究チームは、チオール基を持つ高分子ナノ粒子を海水に投入することで、金イオンを高い効率で回収する実験に成功しました。

従来の物理濾過や化学沈殿と比較して、処理時間の短縮や選択性の向上といった点で、ナノ技術の有用性が証明されつつあります。

日本発!海水資源回収プロジェクトの最前線

日本では、環境資源の有効活用を目的に、複数の研究機関と企業が海水中の微量資源回収プロジェクトに取り組んでいます。
以下は代表的な3つのプロジェクトです。

  • 東京大学×JAMSTEC:海底熱水鉱床に近い海水から金・レアメタルを同時回収する技術を共同開発中
  • 物質・材料研究機構(NIMS):海水中の金を選択的に吸着する新規高分子材料を開発
  • 三井化学:藻類由来バイオマスを利用した持続可能な金抽出装置の実証実験を展開

これらの取り組みは実用化にはまだ至っていませんが、将来的なブレークスルーとして注目されており、海水に眠る金の現実的な活用へ向けての一歩となっています。

まとめ

金が海水に含まれているという事実は、古くからの伝説や仮説にとどまらず、現代科学によって明確に裏付けられた事実です。

実際には極めて微量ではあるものの、地球規模で考えれば莫大な量の金が海に眠っていることがわかっています。
しかしその抽出には経済的・技術的な壁が立ちはだかっており、商業的な採取は今なお困難なテーマです。

とはいえ、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーといった新技術の登場により、未来には海水から金を採取する時代が訪れるかもしれません。

現状を知り、科学の進展を見守ることで、金という資源の新たな可能性に目を向けることができるでしょう。

よくある質問

金は海水で錆びる?

金は非常に安定した貴金属で、酸化や腐食に強い性質を持っているため、海水のような塩分を含む環境でも基本的には錆びることはありません。

ただし、合金の場合は他の金属部分が腐食する可能性があるため注意が必要です。

海水から金がとれるって本当?

海水にはごく微量の金が含まれており、実際に科学的に証明されています。

ただし、その濃度は非常に低いため、現在の技術や経済条件では採算が取れず、商業的な金採取は行われていません。

研究段階では新たな抽出法も検討されています。

海水中に金は含まれている?

はい、海水中には確かに金が含まれています。金はイオンやナノ粒子の形で存在し、海水1トンあたりにおよそ0.01〜0.06ミリグラムが含まれるとされています。

この量は目に見えないほど少ないため、通常は存在を意識することはありません。

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この記事を書いた人

安井 理のアバター 安井 理 リユースライター

慶應義塾大学 文学部 人間関係学科卒。1999年より神奈川を中心に学習塾・結婚相談所・リユース専門店などを経営。特にリユース専門店は県内30店舗まで展開した後、戦略的バイアウト。以降は越境ECや業界特化型のライター・コラムニスト・アドバイザーとして活躍。

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