知っておきたい金相場下落のリスクとは(2023年度版)

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ここ15年ほどで買い取り店やリサイクルショップへの持ち込みが激増したのが金(ゴールド)製品です。特に2020年に入ってからはコロナウィルスなど、世界経済の不安要素も関係し、いわゆる「有事の金」と言われるようにかつてない高騰を見せています。

留まることを知らず上昇を続ける金に、「これだけ高いなら…」と投資を考えている方も多いのではないでしょうか。これは当然の流れと思います。しかし金への投資を検討する際には当然「損をする可能性」について考えておく必要があります。先物相場にせよ、また金の現物を持つにせよ相場は流動的なので、上がるときもあれば下がるときもあるものと考え、自分なりに未来の相場を読んだ上で仮説を立ててアクションすることが大切です。

金への投資についていろいろな雑誌・投資情報系サイトなどを見ていくと投資をスタートするうえでの金の魅力についてはかなり語られていますが、その一方での金の急落リスク(マイナス要素)についてそれほど情報はありません。よく「金は長期保有に向いた安定資産です」といった説明を受けることがあります。もちろんその通りなのですがすべての人が数十年単位での保有を考えているわけでもないですし、また逆にこれだけ高騰してしまうと「急落する可能性」を意識する必要も出てくると思うのです。今回はわきまえておきたい金相場の急落可能性と、その要素原因についてお伝えしていきます。

目次

今さらでも、金の高価値・高騰の理由を知る大切さ

下落の可能性を考える前に「そもそもなぜ今金は高いのか?」ということを知っておくことは大切です。金が下落するというのは多くの場合「それが高い理由」が否定される、無くなるということになるので先を読むためにもどういう時に金は上昇しやすいのか(裏を返すと下落しやすいのか)ということを整理しておきたいものです。

そもそもなぜ価値が高いのか

金は古代から貴重品の代表として知られているのは言うまでもありません。もっとも価値の高い貨幣や宝飾品などに使われていることからそれは明らかです。

しかし原点に戻ってその理由を考えてみると、
〇見た目がきれいで、経年変化もそれほどはしない。
〇希少で量がともかく少ないので、需要は多いが供給は少なく取り合いになる。
といったことが挙げられます。

また酸化や腐食などにも強く一度溶けても再生可能という安定した性質もあります。そうしたこともあり贈り物や資産の象徴として数千年もの間君臨してきたということです。

近年高騰した背景と理由は何か

さらに近年になると、金をさらに高騰させる理由が加わります。それは、
〇スマホや精密機械など、工業製品に使われる需要が増えた。
〇為替相場・先物相場などのシステムが完成し、金の価値がそれにリンクして世界的に動くようになり投資の対象となった。
といったところでしょうか。

これについて、まず素材としての金の使い道が大きく広がったということはとても大きく、パソコンやスマホなどの重要部分については必ずと言っていいほど金が使用されています。それいがいにも特に電子機器などの部品作成素材としていわゆる「工業利用」をするケースが増えているので、そうした業界の動向も相場に影響します。

また相場システムについては、昔は「金はあくまでも所持するためのもので、手放さない前提でため込む」という発想の保有が多かったと思います。たとえば大貴族が金製品を収集する際には「これを売って利ザヤを稼ごう」などとは考えていなかったはずですよね(笑)。

しかし現在では「金を買う」という人の多くが「投資」を考えており、売買をすることで利益を得ようとします。その分だけ「金が一つ所にずっととどまる」ということは時代の流れとともにかなり少なくなり、同じ量に対しても取引が活発になってきたということが価値を押し上げている大きな原因と言えそうです。

21世紀に入ると新興国の経済発展もあり金の需要はさらに高まり、多くの専門家の中で「長期的にみれば急落の可能性は低い」と捉えられています。特に今世紀に入ると金相場は大きく上昇したのですが、現状でも「金相場はまだまだ安い」と捉えている専門家も多くいるのです。

金相場が下落を招く3つの要素とは

為替相場が大きく変化する際、影響を受けやすい

金相場の下落につながる要素を紐解いていくと、「短期的に金相場が下がる時は円高になっている場合がある」ということに気が付きます。金相場は世界共通なのですが、その基軸となっているのがアメリカの「ドル」です。「1オンス何ドル」という大元の相場が存在して、これが「1ドル何円」というドル円の為替相場に掛け算されて、日本では「1グラム●●円」といった金相場になるのです。単純に「元の相場」×「為替相場」の掛け算になるのですから、円安になればなるほど(1ドル100円→110円など)比例して日本での金相場は高まります。逆に円高になると(1ドル100円→90円など)その分金相場はすとんと落ちてしまう訳です。

したがって短期的に見れば為替相場を見ると金相場の上下とかなり連動しているので理由が分かります。ただし、長期的に見ると「円高になる→国際的な経済不安がある→金相場が上がっていく」という流れに大体はなりますし、逆に「円安になる→経済不安は少ない→金相場はその分下がる」という現象が多く起きているので、中期的長期的には為替相場は「ニューヨークの金相場が逆の動きをすることで吸収されてしまい、結局それほど大きな変化をもたらさない」ことが多いです。ただ短期的にはこの為替相場の動きは直接影響するので、下落要因としては頭に入れた方が良いと思います。

社会や政治の安定性に大きな影響を受ける

また中期・長期的に見て影響を与えるのが社会や政治の安定性への「信頼感」になります。金の相場を直接決めるニューヨークの金相場(ドル建て)では、ある意味通貨のFXと同じ感覚で投資の資金が動いています。一般にアメリカの金利が上昇するとドルが買われて逆に金が下落し、逆もまた真なり…という傾向があるようです。

またアメリカ以外でもたとえばその国の政治が安定して将来有望そう…ということであればその国の通貨が買われて例えば日本では「円高」といった現象が起きるわけです。

しかし例えば2020年のコロナウイルスの影響などで「どこの国の政府も対策に苦慮して経済的に打撃を受けるのではないか」という予想がされると、「比較的安全な国の通貨を買う」ということもできずそれらの資金が金に流れてきて、結果的に金の高騰を招く…といった事態となります。そう考えると金相場は国の通貨と同じ感覚でつながっており「どの国にも投資しづらいムードになったとき」に金は投資され相場をより上げていく…と言った性格もあるのです。

これは戦争やクーデターのリスクが出てきた場合も同じことが言えます。そうしたことが起こるかもしれない…と予想される国の通貨は売られて価値を下げ、逆にその資金が安全な国の通貨(日本であることも多く、それが円高を引き起こすのですが…)または「金」に流れ込んで価値を上げ相場を押し上げていく…と言った現象が起きます。少し不謹慎ではありますが、「社会が安定し将来性に懸念がないときは金が安く、逆に戦争や疫病その他、悪いことが起きそうなときに金は上昇しやすい」と、一言で言えば傾向を説明することもできます。

もちろんこうした動きが傾向としてあるのですが、あくまで相場とは心理的に動くものなので絶対にこうなるとは限りません。たとえば2008年のリーマンショックの時は世界的な金融危機が発生しました。金の価格は上がっても不思議はなかったのですがこの時は金融システムそのものへの不安もあり1オンス681ドル(国内では1グラム2,104円)まで急落したのは記憶に新しい所です。言ってみれば相場は「生き物」なので、その時の心理により左右され、一度流れができると予想不能な部分もあります。しかしおおむね社会・政治・経済への信頼感が大きく動くときに金相場も動く…と考えていて間違いないと思います。

需要と供給のバランスが崩れることもある?

金がそもそも高い長期的な理由として、「需要が多く供給が少ない」ということがあるのは上記でお伝えしました。本当に長期的に金相場の動きを見るのであれば、このバランスが崩れて金相場が下落してしまう…と言う可能性も理屈の上では成り立ちます。

理詰めで考えていくと、
〇需要が減っていく(宝飾品や電気製品などに金が使用されなくなっていく)
〇供給が増えていく(金の採掘量が劇的に増える)
と、この2つが起きれば金の相場が下落することも考えられなくはありません。

個人的な感想を言うのであれば数十年~数百年単位では、そうしたことが起きても不思議ではないとは思います。しかし「金投資」としてのサイクルで見て行けば、この理由で金相場が下がってしまう可能性はそれほど多くはないのではないでしょうか。

まず需要が減るという部分についてですが、金の代替となる工業金属が開発されるかそうした電気製品の生産量自体が落ち込むという可能性はありますが、現在のところそういう要素はほとんどなく、また産業としての金の需要は全体の1割程度です。その一方で金は宝飾品としての需要が50%強を占め、また個人・組織の投資や購入で30%前後を占めます。「好みによる所有」であっても「投資による購入」であっても、過去の歴史を見るとその熱が醒めたり突然投資の対象から外れる…と言ったことは考えづらいのです。

次に供給(金の生産量)が増えて価値が下落する…と言った面ではどうでしょうか?これも正直考えづらいと思います。世界各地の金山から金は生産されますが、古代より採掘を繰り返した金はその埋蔵場所その他についても相当な所まで分かっていて、ここからさらに劇的に生産が増えるということは考えにくい状態です。

また海底やさらに深い地下からの採掘などの展開も考えられるのですがコストがかかって採算も合わなくなるので、「採算の合う形での採掘がどこまで増やせるか」という視点で考えると、よほど劇的な技術でも開発されない限りは供給が増えすぎてしまう…ということは考えづらいのです。

金の投資をするうえで心掛けたいこと

一気に大量購入はできるだけ控える

個人的な意見ですが金をこれから買う、投資していくということを考えるのであれば、私は定期的に少しずつ仕入れて保有を増やしていく…と言うやり方をお勧めします。投資の利益を大きく左右するのは「いつ売るか」以上に「いつ買うか」ということです。さらに言うのであれば「いくらで仕入れるか」という基準になる価格こそが投資の成否を決めると言っても良いと思います。

もちろん金投資の場合は長期的な動きを視野に入れますが、ちょっとした相場の上下に一喜一憂してしまうようであればそれ自体をあまりお勧めできません。長期的な保有を視野に入れる一方で仕入れ値で損をする、というリスクを最小限にするためには「定期的に少しずつ保有量を増やしていく」やり方がお勧めです。もちろん一時的に大きく下落している時期などはこの限りではなく、「仕入れのチャンス」であれば話は違うのですがそれでもできる限りは一度に大量購入を避けるのがリスクを避けるコツだと思います。

金以外の金属への投資もあり

金とよく似たような値動きをする貴重な金属は他にもあります。たとえば宝飾品などをはじめとして自動車部品などにもよく使用されるプラチナ、また宝飾品など金との混ぜ物にも使用されるパラジウムなどです。

これらは金とよく似た値動きをすることが多いのですが値上がり・値下がりの幅は比較的大きいことも多く、また金以外の要素からも影響を受けます。(例えばプラチナであれば自動車産業などの動向が左右すると言われていますが、逆に言うと思わぬ理由で下落してしまうこともあるので注意が必要です)ある意味「応用編」とも言える投資対象なのですがそのリスクを把握した上で投資をしていくのであれば選択肢として良いかもしれません。

あくまで長期的な視野が大切

過去の貴金属相場の値動きを見ていくと、大きな価格変動はやはり数か月というより数年単位で起きていくものです。

また金の場合、他の金融資産と同じく売買には手数料がかかることが多く、それらを差し引いて目に見える利益を出すためにはそれなりの時間が必要となります。金に限らずアクションを起こした前後というのはささいな価格の上下に一喜一憂し、つい迷いを生じてしまいやすいものなのですが、特に金投資については年単位での利益を意識し、腰を据えて向き合う姿勢が大切と思います。

読んでいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

安井 理のアバター 安井 理 リユースライター

慶應義塾大学 文学部 人間関係学科卒。1999年より神奈川を中心に学習塾・結婚相談所・リユース専門店などを経営。特にリユース専門店は県内30店舗まで展開した後、戦略的バイアウト。以降は越境ECや業界特化型のライター・コラムニスト・アドバイザーとして活躍。

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